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東京高等裁判所 昭和42年(ネ)1410号 判決 1969年5月12日

被控訴人 株式会社八十二銀行

理由

当裁判所は、控訴人の本訴請求は理由がなく、棄却すべきものと判断する。その理由は、次に附加するほかは、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。

一  (省略)

二  当審における控訴人代表者田路周一尋問の結果中原判決の認定と抵触する部分は、信用しない。

三  控訴人の当審における主張は、すでに原判決において理由のないことが判断されているがさらにその理由を補足する。

(一)  当裁判所は、原判決説示と同じく、商法第二四五条第一項第一号にいう「営業の全部又は重要なる一部の譲渡」とは、同法第二四条以下にいう営業の譲渡と同一意義であつて、営業そのものの全部または重要な一部を譲渡すること、すなわち、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要な一部を譲渡し、これによつて、譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に同法第二五条に定める競業避止義務を負う結果を伴うものをいうものと解する(最高裁判所昭和三六年(オ)第一、三七八号、同四〇年九月二二日大法廷判決参照)。もつとも、この点については、異論の存するところであるが、同一法典中の同一法律用語は原則として同一意義に解するのが相当であり、このように解することが法律解釈の統一性および安定性を保持する所以であり(なお、法律概念の相対性を認め、同一の法律用語を異別に解する場合はやむをえない場合に限られるべきものであり、本条の場合そのやむをえない必要がある場合とは解せられない。)、また、営業活動の承継の有無によつて株主総会の特別決議の要否を容易に判別することができる点で、譲受人の取引の安全を保護しうることとなり、法律関係の明確性と取引の安全にも資するものであること等の理由から、前記説示と異なる見解には、にわかに同調することができない。しかして、本件売買は、叙上説示の意味の営業の譲渡に当たらず、営業を構成する各個財産の譲渡である以上、これと異なる見解を前提とする控訴人の当審における主張(一および二)は採用の限りでない。

(二)  控訴人は、代表取締役が取締役会の決議を要すべき行為を決議を経ないでした場合における右行為の効力について主張するが、取引の安全を顧慮することを要する個々的取引行為の場合には、原判決に説示するとおり、取締役会の決議は会社の内部的意思決定にすぎないものとして、代表取締役が取締役会の決議を経ないで当該取引行為した場合でも右取引行為は当然無効となるものではなく、民法第九三条ただし書を類推して相手方において右決議のなかつたことを知り、または知りうべかりしときに限つて無効となるものと解すべきであり、これを本件についてみるに、木曽官材市売協同組合においては控訴会社の取締役会の決議がなかつたことを知り、または知りうべかりし証拠はない。したがつて、控訴人の右主張は採用するに由ない。

以上の次第で、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却

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